37.シンガポールの屋台にて
 ようやく陽が傾き、やさしくなった街へ出てみる。ボタニック・ガーデン(植物園)の蘭園へ向かうため、フロントで教えてもらったバス停からバスに乗る。前乗りワンマンバスに乗るなり戸惑った。料金箱がない。運転手は自分の左後ろの券売機を指して「買え!」という。出てきたチケットをどうしたらよいのか聞くと「持っておけ!」なんや知らんがそうしとく。

 ボタニック・ガーデンの入り口で降りて、蘭園への看板を頼りに歩くが、一向に着かない。何かの集まりの帰りか、にこやかに中国語で喋りながらの家族連れと何組もすれ違う。尋ねながら着いた蘭園は既に閉まっており、思いのほか小振りの園内を金網越しに見る。普通のシンビジュームが見えた。

 薄暗くなった公園の外で、明かりと空腹に誘われて屋台公園へ。テーブルと椅子が所狭しと並んだ30〜40m四方の広場を7軒程の屋台が鍵の手に囲んでいる。焼きそば、チャーハン、南国のフルーツジュース、焼き鳥などなど鮮やかな看板を、照明とおいしそうな煙が引き立てている。
 テーブルには現地の若い人ばかり、食べながら話に夢中の活気である。
「どれにしようかな」屋台を一軒ずつ覗いて廻り、まずは喉の乾きをいやすため、珍しいスターフルーツジュースと普通のオレンジジュースを買った。星の形の輪切りがカップの縁にさしてある。
スターフルーツは、シャリッとセロリのような歯ごたえで、水ぽい甘酸っぱさ。

案内してくれたお二人と 空きテーブルはなく、慣習どおりやや太めとやや細目の男性2人組に相席をお願いした。
「食事をしたいんですが、何がおいしいですか?」相席の気安さから尋ねてみた。
「う〜ん。ここの屋台はマレー系料理だから、うまいものがない。ニュートンサーカスへは行ったか?」
行き方を尋ねていると、「案内してあげよう」と言ってくれた。
悪い人でもなさそうで、素直にご好意を受けることにする。
 屋台から少し離れた路上の車の手前で、彼の車の方向指示ランプが点滅した。誰か乗ってるのかと思ったが、エンジンスターター・リモコンの応答合図だと、乗ってから分かった。
ファミリアの4ドアセダンだけど、現地での名はX308?とかの記号名。
ここでは高根の花、かなり自慢の車らしい。「日本ではファミリアって名前です」は蛇足だった。
 きらびやかなネオンが輝くオーチャードロードを通って海岸沿いの道路で降りた。
「あれがマーライオン」「屋台はここを真っ直ぐ行ったところ」「ホテルへの帰りは地下鉄がいい」と教えてくれた。
別れる前に4人での記念写真を撮り、名刺を貰った。写真とお礼を出さなくては。


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