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34.観光する犬達
 ヴンゲンへの登山電車は満員だった。
我々の座席横の通路にダックスフントを見つけた。
あまりの人混みのためか飼い主の足元で震えている。
電車が揺れる度によろめいて短い脚を踏んばり、
ご主人様を見上げては不安感を消そうとしているようだった。

 グリンデルワルトから村内バスに飛び乗った。
果物を買った商店街からバスの駅は意外に遠く、時計を見ながら走り、
切符を買いに走り「乗れた、座れた」とほっとしていると、
高いシート越しに前の座席の人が我々を振り返ったら犬だった。
シートに正座の凛々しいシェパードが、おばさんを連れていた。
へんな外人である我々をときどき振り返るとき、ぽたぽたよだれが垂れた。

 ヨーロッパでは犬は家族。だから運賃は子供料金と決まっている。
(ただし、子供料金を支払っても、シートに乗せるのは禁止)
すばらしいね、この考え方としつけの良さ。
恐くてもワンとも吠えぬ犬は、日本人の観光客や、子供より公衆道徳を身につけた国際人だ。
見習え!バカ共!

アイガー北壁 アイガーとメンヒ 生まれたばかりの小川さん
チュッゲンを回り込む(30ページの広角)

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