33.スイスの日本人
 2日間の宿であるミューレンへ登るケーブルカーの中に黄色い日本語が響いていた。
2家族分の小学校低学年のがき共だ。
景色も見ないで「せっせっせ・ぱらりこせ」等とふざけあっている。
周りの観光客も最初は微笑ましそうに見守ってくれていたが、
電車に乗り換えてもいっこうに止めないどころか、声が大きくなったやつらに、
眉をしかめ顔を背けている。
車窓には木立越しにアルプスの大パノラマが広がっているが、
ゆっくり景色を楽しむ雰囲気はぶち壊されている。
終点に着くとハニーは「同じグループと思われたくないから」と振り切るように宿へと走りだした。
我々は、「同じ日本人として恥ずかしい」と逃げ出したのである。

 あくる日メンリッヒェン〜クライネシャイデックのハイキングとグリンデルヴルトでのチーズフォンデュを楽しんで、ミューレンの宿へと向かう最終便のケーブルカーで同じ黄色い日本語が響いてきた。
「よ〜し!昨日は逃げ出してしまったけれど、今日は同じ日本人として注意して来る!」
意を決して前の車両へ行くと、30才前後の義理の姉妹と思しき大人と例の騒ぐ子供達。もちろん親を捕まえて、
「公共の乗り物では騒いではだめ!公衆道徳を子供に教えろ!このままでは日本人は嫌われる!」
と説教した。
ミューレンへ向かう電車からのメンヒとユングフラウ


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