triphasic wave

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triphasic wave(三相性波若しくは三相波)は肝性脳症(肝性昏睡・肝脳疾患)にかなり特徴的に出現します。
 

  

[特徴]

1. 基線の上下を交替する3つの成分(陰−陽−陰、または、陽−陰−陽)から構成されます。

 

2. triphasic waveの持続は300〜500msec程度で、成分的な持続時間は第3相が最も長く、次いで第2相、第1相という順になります。

3. 振幅は一般に最初の陰性部分が50〜100μV、次の陽性部分が200〜300μV、  最後の陰性部分が200〜300μVであり、一般に第2相が最も大きくなります。

4. 前頭極・前頭・中心優位に出現します。

5 多くの場合、左右対称性・同期性です。

6. triphasic waveの極性は、基準電極導出で記録した場合に主体を成す大きな振れが陽性の事も陰性のこともあり、部位によって相違することもあります。

7. triphasic waveは多くの場合、α波と同様に開眼その他の覚醒刺激によって一時的に抑制され背景を成す徐波のみが全景に出てきます。しかし、意識混濁が強い時には覚醒刺激によってあまり影響を受けないことが知られています。

8. triphasic waveが律動的に出現し、その間に徐波が介在すると鋭徐波複合に似た波形を呈することがあります。

この様なtriphasic waveをa blunt spike and a slow wave(鈍い棘徐波複合)と呼ぶ場合もあります。また、大きな振れの前後の振れが小さく、三相性波と呼ぶよりむしろrhythmic sharp waves(律動性鋭波)と呼ぶ方がふさわしい場合もあります。

 

[意義]

1. triphasic waveは肝性脳症(肝性昏睡・肝脳疾患)にかなり特徴的に出現します。

肝疾患の存在そのものと脳波異常は直接関係しないので注意してください。

2. triphasic waveの出現する時期は、一般に意識混濁が比較的軽いθ波からδ波に移行する時期、及び、δ波期の初期です。

triphasic waveは嗜眠状態・せん妄状態の時期に現われ、最も多く観られるのは半昏睡の時期です。

 

【肝性意識障害の進行と脳波の関係】

1) 意識障害の初期(軽い意識混濁の時期)には、α波の周波数減少と不規則化が起きます。                      2) 意識障害がやや進行して、見当識(場所・時)が多少おかされてくる時期になると、6〜 7Hzのθ波が広汎性に出現します[θ波期]。

※ この時期より三相性波が観られる場合もあります。

3) 更に意識混濁が強くなり痛覚刺激によっても覚醒が不十分な程度になると、特異的な三相性波が徐波背景上に出現します[三相性波期]。

4) 意識混濁が一層強くなり深昏睡の状態になると、三相性波は消失し、不規則なδ波が広汎性に現われます[δ波期]。

5) 意識障害が更に悪化すると、脳波は全般的に平坦な波形に近づいていきます。

【備考】

1. 脳波変化は意識混濁の強さとほぼ平行するが、意識混濁がそれ程目立たないにも関わらず著明なθ波やδ波が出現する事があります(潜在性昏睡)。この所見は近く昏睡(意識障害)が起こることを示唆するものであると考えられています。

2. 一般に肝性脳症の際には他の原因による意識障害の場合よりも、意識混濁の程度に比べて脳波の異常が強い傾向があります。

3. 肝性脳症、特に肝脳疾患特殊型では、意識障害は発作性・挿間性に出現するので、意識の鮮明な時期の脳波像は背景にある脳の機能状態ないし脳の器質障害の程度を示唆する指標となります。

※ 基礎律動の徐波化・徐波混入の増加・脳波の平坦化などは病勢の増悪を示唆し、予後不良を予測させる所見となります。     │

4. 塩化アンモン負荷試験によりθ波・δ波等が誘発される場合には、肝性脳症の存在が示唆され、診断に役立つことがあります。