携帯電話の電波

携帯電話の普及に伴って、携帯電話から発する電波とME機器の誤作動が議論されるようになりました。

ME機器を含む電子機器には精密な電子回路が内蔵されていますので、比較的弱い電波でも影響を受ける可能性があります。もちろん、電子機器そのものにも電波の影響を受けにくくするための対策は施されていますが、万全ではありません。

このため、電波環境協議会(旧不要電波問題対策協議会)は「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」を提唱しました。

 

 

電源が入った状態の携帯電話は、通話中以外にも定期的に、たま、自動的に電波を発射しています。そして、携帯電話から発射される電波は床、壁などを透過する可能性があります。

しかし、携帯電話の電波は、頭部のすぐそばで使っても人体に影響がでないように、十分な安全性を見込んだ厳格な基準にのっとって製品化されていますので、携帯電話は安心して使用できます。

 

「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用に関する指針」の要点は次の通りです。

 

【病院や医院など医療機関の施設内での注意】

1) 携帯電話の使用について

(1) 手術室、ICU、CCUおよび、それらに隣接する場所
人命に直接関っているME機器が誤動作する可能性があるために、一般に手術室、ICU(集中治療室)、CCU(冠状動脈疾患監視病室)等への携帯電話の持ち込みは禁止されています。また、これらの医用室に隣接する上下階および左右の部屋、廊下などにおいても、携帯電話の電源を切ることが求められています。

(2) 検査室、診察室、病室およぴ処置室など(透析室、新生児室を含む)

検査室、診察室、病室およぴ処置室など(透析室、新生児室を含む)には多くのME機器が設置されている可能性が高く、かつ、ME機器を装着した患者が移動する可能性も高いので、携帯電話の電源を切ることが求められています。また、これらに隣接する上下階および左右の部屋、廊下などにおいても、携帯電話の電源を切ることが求められています。

(3) その他の区域

医療機関側が携帯電話の使用を特に認めた区域でのみ携帯電話を使用できます。しかし、医療機関側が使用を認めた区域においても、その付近でME機器が使用されている場合には、携帯電話の電源を切る必要があります。

2) 小型無線機(アマチュア無線機・パーソナル無線機・トランシーバなど)の使用について

小型無線機は携帯電話と比較しても、ME機器に影響を与える可能性が高いため、医療機関の施設内やME機器の周辺には、原則として、小型無線機の持ち込みは禁止されています。ただし、緊急時・災害時は除ききます。

3) PHSの使用について

(1) PHS基地局
医療機関の施設内に設置されたPHS基地局から発射される電波によりME機器が誤動作する可能性があるため、ME機器に影響を及ぼすことがないよう管理区域を設けるなどした上で、送信バースト出力160mW(平均出力20mW)以下のPHS基地局を設置できます。

(2) PHS端末 (デジタルコードレス電話(親機・子機)を含む)

送信バースト出力80mW(平均出力10mW)以下のPHS端末に限るとされています。

ただし、PHS端末を医療機関内で使用する場合には医療機関の許可が必要で、かつ、医療機関内で使用するPHS端末には識別用ステッカーを貼付することが求められています。

(3) PHS端末の取扱い

PHS端末から発射される電波(出力は携帯電話端末の1/10以下です)によるME機器への影響は携帯電話端末と比較して小さいものの、PHS端末をME機器へ近づけた場合、ME機器にノイズ混入したり、誤動作する可能性があるため、ME機器にPHS端末を近づけてはいけません

手術室、ICU、CCUなどにおいては、人命に直接関わるME機器が多数設備されているため、安全管理上、PHS端末の電源を切ることがもとめられています。

なお、患者やその家族などが、医療機関外から持ち込むPHS端末については、原則として、携帯電話と同様に取り扱います。

4) 小電力無線局(構内ページングシステムの基地局、無線LAN、他)

例えば、構内ページングシステム基地局(400MHz帯の電波を使用するポケットベル)、無線LAN、コードレス電話、特定小電力無線局(無線局免許を要しない空中線電力10mW以下の無線局であり医療用テレメータ他)などの小電力無線局から発射される電波によるME機器への影響は携帯電話端末と比較して小さいものの、これらの小電力無線局ME機器へ近づけた場合、ME機器にノイズ混入したり、誤動作する可能性があるため、ME機器に小電力無線局を近づけてはいけません
 

 

【植込み型心臓ペースメーカ装着者の注意事項】

植込み型心臓ペースメーカを装着しているヒトは、次の事項を遵守することが望ましいとされています。

1) 携帯電話・PHS端末・コードレス電話

携帯電話やPHS端末およびコードレス電話の使用、および、携行に当たっては、携帯電話を植込み型心臓ペースメーカ装着部位から22cm程度以上離す必要があります。

2) 自動車電話・ショルダーホン

植込み型心臓ペースメーカを自動車電話およびショルダーホンのアンテナから30cm程度以内に近づけない必要があります。

3) 小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線機、トランシーバ)

小型無線機は携帯電話端末と比較して植込み型心臓ペースメーカに影響を与える可能性が高いため、小型無線機を使用してはいけません
 

 

【医療機関以外でのME機器の使用】

1) 在宅医療

人工呼吸器、酸素濃縮装置などのME機器を在宅医療に用いる場合、少なくともME機器を使用している部屋内では、アマチュア無線機や携帯電話など電源を切ることが求められています。

2) 在宅医療以外(企業や大学の研究室、他)

植込み型心臓ペースメーカ以外にも医療機関以外の場所でME機器を使用する場合、これらの機器の使用者は無線通信システムからの電波による影響について、個別にME機器製造業者、電気通信事業者などの関係者に確認を行うことが求められています。
 

 

【植込み型心臓ペースメーカ装着者及び補聴器使用者への配慮】

植込み型心臓ペースメーカ装着者はその外見だけでは特定できません。

植込み型心臓ペースメーカや補聴器を使用しているヒトと近接した状態となる可能性がある場所(例えば満員電車など)では、携帯電話などの電源を切るといった配慮が望まれています。

 

 

【その他の事項】

1) ME機器を装着した患者の搬送

体外型心臓ペースメーカ、人工呼吸器などのME機器を装着している患者を医療機関外へ搬送するため、待合室等を通過する場合には、随伴者には搬送路周辺において携帯電話が使用されていないことを確認することが求められます。

2) 補聴器使用者への注意事項

携帯電話またはPHS端末がごく接近した状況では、補聴器に雑音が混入することがあるため、補聴器使用者が携帯電話またはPHS端末の使用する際には、補聴器製造業者、端末製造業者あるいは電気通信事業者に確認することが求められています。

 

 

【電磁波】

電磁波とは電界と磁界がお互いに影響しながら空間を光速で伝わっていく波動です。電界と磁界は波動として空間中を伝搬するという法則はマクスウェルの電磁方程式とよばれています。

【電磁波がヒトの身体に与える影響】

1) とても強い電波が人体にあたった時に全身や局所の体温が上がる熱作用

2) 周波数が低い電波が人体にあたった時に体内に生じた電流が神経を刺激する刺激作用

人体に極めて強い電波があたると、その部分が電波のエネルギーを吸収し、温度が上がります。この温度上昇で起きる生体作用を熱作用といいます。これに対する制限として、科学的な根拠に基づいて、全身平均および局所的な電波の比吸収率(SAR : Specific Absorption Rate)の基準を定めたガイドラインが、国内外の公的機関から示されています。

人体側頭部のそばで使用する携帯電話機などに対して、比吸収率が2W/kgを超えないようにすることが、平成14年(2002年)6月から義務づけられています。

一方、電波には熱作用以外の作用があることを指摘する意見があり、脳腫瘍などの癌(がん)との関連性や、遺伝子への影響について関心が持たれています。

しかしながら、これまでの多くの研究では、携帯電話の電波が人体へ悪影響を及ぼすという証拠は示されていません。