身体のバランス(体平衡)や緊張の評価 〜 重心動揺 〜

ヒトは知らず知らずのうちに身体のバランスを保っています。その身体のバランスの保持の状態を客観的に表現したモノが重心動揺です。

ヒトの重心保持機能は、様々な心理的・精神的負荷に影響され、容易に変動することが知られています。

 

【重心動揺の記録方法】

一般的な重心動揺の記録方法は次の通りです。

1. 指定された方向を向いて被験者を検出台の上に両足内側縁を接する様に直立させ、水平方向の眼前2〜3メートルの位置におかれた指標(注視点)を検査中は見る様に指示します。無論、靴は脱がせます。

2. 開眼状態(人間工学的にはこの記録が基本環境)で重心が安定した後、60秒間直立させて重心動揺を記録します。

3. 閉眼状態(人間工学的にはこの記録が実験環境)で60秒間直立させて重心動揺を記録します。

4. 重心動揺の総軌道距離や動揺面積、重心動揺中心の偏倚、ロンベルグ率、パワースペクトル、その他を自動解析します。

 

 

【検査上の注意】

1. 静かで照明が安定しており聴覚や視覚刺激による偏位を生じない様な部屋を選び、被験者に両手が体側に接する自然な直立姿勢をとらせて記録して下さい。

2. 面倒でも注視点は被験者ごとに水平眼前に設定し、視野内に動くモノが無い様にして下さい。

3. 被験者の足底の中心が検出台の基準点と一致する様に直立させます。

4. 記録時間は60秒間が原則ですが、60秒間の直立姿勢維持が困難な場合は、30秒間直立させてもかまいません。

5. 重心動揺は個体差が大きいので、過去の平衡機能の状態や日常生活における体平衡異常の有無、スポーツ歴などを参考にして検査結果を評価する必要があります。

 

 

【重心動揺の評価例】

基本的には、重心動揺の評価としては、普通の状態での身体のバランス状態と実験環境下での身体のバランス状態を比較することになります。

重心動揺は1分間の身体の重心の移動曲線のグラフとして得られます。

比較する指標は、基本的には、総軌跡長(1分間の身体の重心の総移動距離)と内部面積(軌跡の外周に囲まれた面積)をもちいます。

 
事例1

基本環境の身体のバランスも実験環境の身体バランスも明らかな差が無い事例です。

 

事例2

基本環境の身体のバランスと実験環境の身体バランスに明らかに差がある事例です。

総軌跡長では約2倍、内部面積では5〜6倍の差があります。普通では、この様な差は起きてこないと想うかも知れませんが、例えば、実験環境で飲酒した時などでは、この様な結果になりやすいです。

 

事例3

基本環境でも実験環境でも、わざと身体バランスが悪いように装っている事例です。

事例1および事例2とは明らかに重心の移動パタンが異なることがわかりますね。

例えば、飲酒した時などの状態を思い起こしてみて下さい。普通の場合、ふらふらになりながらでも、ヒトは重心を保持しようと努めますよね。重心を保持しようと努めれば、つまりは重心は軌跡中央のある1点に向かうのです。

しかし、この事例3の場合は、重心が無軌道に移動しています。重心を保持しようと務めていない訳です。つまり、バランスを保ちながら作為的に重心を移動した結果をこの事例は表しているのです。

病気のヒトを相手にした実験ではないのですから、この様なデータは破棄しなければなりません。

 

 

【被験者の選択】

以下に合致する被験者を選択するように心がけましょう。

1. 直立姿勢になってもらい、身体の重心が安定したヒトを選択しましょう。

2. 緊張度を記録する場合には、ストレスを受けやすいというヒト、例えば、タイプA行動パタンを示すヒトなどを選択しましょう。