BGM:オルゴールの小箱さん「セピア色の写真」

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        天道虫母に土産と差し出す子

長男が小学一年生の時の担任の先生は、まだ2年目のとっても若い先生でした。
とっても一生懸命で、「かたつむりと遊ぼう」という授業のときには、
クラスの子、ひとりひとりにかたつむりが見つかるようにと、
前もって、かたつむりを捕まえて、自分の部屋で何日か飼い、
それを、子どもたちが見つけるお寺に放して準備しておいたような先生でした。
小学校の近くには、土手があり、その草原で虫や草花と遊ぶ授業がありました。
「おかーさん。今日、土手でな、天道虫を捕まえたんよ。
それで、おかあさんに見せようと思ったんだけど、逃げてしもうたんよ」
その事を先生に話すと、「ええ、マコトくん、大事に大事にそっと両手に
入れてましたよ」と教えてくれました。

        
           濡れたがる子に傘差して若葉雨

何を考えているのかわからないけど、
とってもおもしろいタク。
出かける時も、右足は、運動靴で、
左足はサンダルだったりする。
お花見に行く時、お弁当をバス乗り場に忘れたりもする。
魚を見つけると、じゃぽじゃぽ川に入ってしまいそうになるのを
毎日なだめながら幼稚園に通った。
先生も「タクちゃんは、いつも、園庭で、カミキリムシやバッタや
かたつむりをとって遊んでますよ。」と教えてくれた。
そのタクは、傘が嫌い。傘をさすのが重たいのか、面倒なのか。
雨が降ると、傘をさして追いかける私に、わざと逃げまわっていた
幼いころのタクだった。

          
            若葉風天守の窓より手を振る子

俳句を始めてまもない頃、東京から先生をお迎えして、
俳句会に参加することになった。
始めて先生に会えることに、どきどき。当日句ができるかどうか、どきどき。
・・・・というわけで、俳句会の前日、岡山城(烏城)に子どもたちと
出かけた。はしゃぎまわる小一のマコト・幼稚園のタク・1歳のリーを
怪我させないように、追いかけるだけで、精一杯。
とうとう一句もできないまま、当日の朝、先生をお迎えした。
俳句会の時間が刻々と近づいてくる中で、昨日、子どもたちが
お城の天守から、手を振っていたことを思い出し、
それが、5・7・5になった。
まるで、神様が贈り物をしてくれたように。


       
           ドーナツを口一杯に日焼けの子

ドーナッツは、簡単。
新しい油と、ホットケーキミックスと、卵と牛乳さえあれば
すぐできる。
子どもたちは、「ぼくも作るぅ」「ぼくも」「ぼくも」
と近所の友達も一緒に、台所が粉のお城に大変身。
で、作るものは、「ボール」とか「みみず」とか「うんこ」に
「おまる」もっと、いいもんは、ないんかい!!
できたてを、アチチッと、ふーふーしながら食べる。
みんな日焼けして、真っ黒な顔の子どもたちが
口一杯に、ほおばっている。
おいしいね。また作ろうね。

       
          爽やかに声のカセット速達で

 19歳から21歳まで毎日通っていた喫茶店があった。
そこには、ノートが置いてあり、常連さんたちが、
詩やエッセイやイラストを書いていた。
毎日のように会ったり、ノートの中で話した。
そこで友達になり、つきあい、別れた人も、結婚した人も。

サイフォンの珈琲の香りが、店いっぱいに広がり、
私より3つ年上のママは、色っぽく、マスターは、
みんなの父親のようだった。
夜は、おしゃれな明かりに包まれて、カラコロと水割りの音が
心地良かった。

故郷に帰ったママとマスターが、みんなに会いに来てくれ、
何年かぶりに集まった。おとうさんやおかあさんになった
私たちを、とても喜んでくれた。
一週間後、速達で、カセットテープが届いた。
マスターからの声の便りだった。

       
             一斉に秋の虹見る車内の子

三人の息子を連れ、おむつの入った大きなバックを肩に掛け、
駅に向かう。
はしゃぎまわる三人息子を、プラットホームから落ちないように
とりおさえて、実家への電車に乗る。

「三人とも、お子さん?」「はい」「かわいいわね!!」
「おかあさんにそっくりね」
「大変だけど、がんばってね」「はい。がんばります」
電車に乗ると、いつも注目されてしまう。三人息子はめずらしいのかな?

「あ、虹!」「ほんと、虹だ!」「きれいだね〜!」と息子たち。
その声に、車内のみんなが、一斉に、窓の外の虹を見た。

       
            十月の空の青さの毛糸買ふ

秋も深まると、手編みの季節になる。

思いを伝えようと、手編みのマフラーを編み、
「これ、誕生日のプレゼントです」と渡したのは、
20歳の時。一年後、彼のお母さんに教わり、
始めてセーターを編みあげた。それから毎年
毛糸を買い、セーターを編んだが、その後は
産まれてくる赤ちゃんのための毛糸の帽子や
ソックス、ベビードレスに変わっていった。

久しぶりに買った、夫によく似合う空色の毛糸は
一体どうなっただろう・・・・。

           
           百人の握手もて果つ聖夜劇

「サンタクロースしてくれるおじいちゃんがいないかしら?」
「じゃ、うちのおじいちゃんに言ってみようか?」
「うん。是非、頼んでぇ!!」

親子クラブのクリスマス会。
50歳で、視力を失い、仕事を失った父は、俳句三昧の日々を
送っていた。
その父に、サンタクロースの役を頼んだ。

歌や工作・劇をした後、サンタクロースの父の登場。
百人の子どもたちに、「おめでとう!」と言って、
ひとりひとり、プレゼントを渡す。
プレゼントは、前日みんなで、おんぶしながら作った「ポップコーン」。
リーが「おじいちゃん」と、サンタの父から離れようとしない。

お昼ご飯を、リーと三人で食べながら
「あんなに大勢だとは、思わなかった」と父。

次の日「こんなにできた」と父から電話。
サンタクロースの句がいっぱいだった。

      
            妹がほしいと言ふ子福寿草

「おかあさん、ぼく、妹がほしい。」
「リーがいるでしょ?」
「リーは、だめじゃ。
 ぼくの言うことを聞く、かわいい妹がほしい。
 デパートに行って、買ってきて」

三男リーは、タクよりも、ひとまわりきかんぼうだった。
タクのすることは、自分もできると思いこんでいるふしがあった。
到底、自分のことを、実年齢では、認識していない。
(認識している1歳児も、いないだろうが・・)
児童公園のてっぺんにどんどん登り、
急な坂も、(赤んぼじゃねぇぞ!)と、私の手を振り払い
長いローラー滑り台や恐竜滑り台から、あっという間に降りてくる。
怪我をしないようにと、追いかける夫と私の休日は、
いつもくたくただったが、こころは満ちていた。


           風花や妖精の声聞こえくる

心が疲れてくると、永田萌さんのイラストを眺める。
透き透ったその絵・・・・
妖精たちの色使いやしぐさにうっとり。。。。

濃いグレーの空の日も、カーテンを開けるように
ひらりとめくると、そこには、すっきり明るい空が。。。
朝露の草の先、辛夷の花の上、菜の花のがくの中にも、
妖精たちがいるような・・・そんな気がしてくる。。

もちろん、風花が舞う中にも。。。

           
              エイプリルフールに決まる退院日

春休み二日目の午後、小1のマコトが急に、「胸が痛い」と言った。
苦しんでいるマコトを連れ、かかりつけの小児科に行った。
「これは、○○病院に行ってください」
紹介状を書いてもらい、大きな病院に、即日入院。

「おかあさん、こんなになるまでどうしてほおっておいたんですか?
 こんなにやせ細って!!!」と担当の先生。
「え?今日の午後、『急に胸が苦しいと言い出したんです。』
 やせてるのは、前からです」と返事したが、マコト、どうなるの??
 覚悟??そんな・・・・・・。

次の日「マイコプラズマ肺炎です。大丈夫ですよ。いいお薬がありますから」
ほっ。

10日間余り、私は、マコトにつきっきりで、同じベットで休んだ。
タクが生まれ、リーが生まれ、なかなかかまってやる時間もなかった
マコトに、神様からのプレゼントだったのかもしれない。
一緒にゆっくり、本を読み、ご飯を食べ、不思議な感じだった。

大変だったのは、夫の母だ。
なんせ、どこにいくかわからない、なにをするかわからない
幼稚園タクと2歳リーの子守りなのだから。

退院した翌日は、始業式だった。
「ぼく、春休みが二日間しかなかった」
とマコトが言った。


      
             
舞い戻る紙の飛行機日脚伸ぶ

未熟児で産まれたタクは、小さくて細くて泣き声も頼りなく,
おっぱいも飲みながらすぐ寝て、おなかがすいて
またすぐ泣く繰り返しだった。
入園して2週間、毎日「おかあさん、帰ったらだめ〜」
と、門のところで泣いていたタクが、年長の発表会では
大きな声で話し、紙飛行機をすぅいっと飛ばした。
その紙飛行機は、大きくカーブを描き、タクのところに
舞い戻ってきた。

        
           十人の子に連れられて花の下


「お弁当持って花見に行こうよ」と友達から
お誘いの電話。春休み、毎日お弁当を作って、
花見に出かけた。
後楽園・近くのお寺・川の土手・・・・。
子どもたちのにぎやかな声。
私たちは、おしゃべり。。

         
             春眠の目覚まし時計二つ鳴る

春は、あけぼの。
ほんのり明けてくるのがここちよい。
もう少し、お布団にくるまっていたい。
あと5分。あと5分だけ、眠らせて
うとうとうと・・・・・・。
「おかーさん!!おなかすいたぁ!!!」

       
               ゆるやかに廻る水車や花菖蒲

「大滝山に連れてってくれんか」
父は50歳の時、過労から視力を失い、
職を失った。が、落ち込むことも無く、
視力障害者の役員活動と俳句の世界に没頭した。
父は、慣れたところは平気だと言い
かすかな視力で、俳句会に東京、弟の家の京都をよく往復した。
私が父の影響で俳句を作り始めたことを、とても喜んでくれた。
しかし、一年たっても、子どもの句しか作れない私に
「子どもの句もいいけど、自然を句にしてみんか。力がつくぞ」
と、大滝山の紫陽花や後楽園の桜を見に、誘ってくれた。
が、なかなか気に入った句は作れなかった。
父は「百句作った」と言っていたけれど。

しばらくして、バラ園に子どもを連れ遊びに行ったら、
ばったり、菖蒲の花の前で父に会った。
その時、この句が生まれた。

      
              家中の入れ物出して蟹を飼ふ

家のすぐ近くに小さな川があり、その川には、夏になると
「ざりがに」が繁殖する。
網をもってすくうと、いっぱいおもしろいようにとれる。
息子たちは、朝から晩まで「ざりがに」をとって、
私は、子どもが寝た夜、こっそり川に放して、
またまた次の日、朝から「ざりがに」取りをする息子につきあう
夏の日だった。
          
                 鈴虫を窓口で飼ふ郵便局

ある日郵便局に行くと、窓口に「鈴虫」が
いい声で鳴いている。
まだ夏の暑さが残っている
けだるい体にも爽やかな秋が訪れる。

「おかあさん。ハイ!」と、夏休み前の終業式に渡された
 鈴虫の入いった籠。
「夏休みだから、学校に置いておけないんじゃて」と小一のタク。
まだ、鳴かない鈴虫の赤ちゃんを、
毎日「おおきくなぁれ」と待ち続けて、
ある日、り・り・り・・・・・・とかすかな鳴き声。
スーパーできゅうりを買っていると「まぁ、高いのに買うの?」
「はい。鈴虫に」「あらまぁ」とびっくりされても。
かわいい鈴虫は、きゅうりでないと、だめなの。
西瓜は、お腹こわしちゃうのよ。
共食いしないように、煮干もあげて。。
毎晩すてきに鳴いてくれる鈴虫がいとおしい。

秋の参観日、先生から鈴虫は二学期学校に返すはずだったことを聞いた。
学校から帰り、タクに聞くと
「あんまりおかあさんが、うれしそうだったから、言えなかったんよ・・・」

       
              爽やかにマラソンランナーピアスして

 あんな風に颯爽と走れたらいいなぁ。。。
 運動オンチな私は、憧れる。でも、マラソンは、きついぞ。
 はんぱじゃないよね。
 
 無駄のないスリムな体。リズミカルな脚さばき。
 ピアスしているおしゃれなマラソンランナー(男性)に
 一句。

         
                 高原の広き農道山粧ふ

「雲海を見に行こう」と夫が言い出し、
 弥高山のログハウスに予約する。
 レストランピーターパンの夕食もすてき。
 オカリナの音色が静かに聞こえるそのレストランで、
 子どもたちがあっという間にたいらげ、部屋に引き上げた後も
 ふたりで、鍋をつつき、さしつさされつ、良い気分。
 8畳の部屋に布団を敷き詰め、5人並んで寝るのも嬉しい。
 朝、6時、子ども達を起こし、頂上まで登る。
 約20分で着く。頂上には、朝日を待つカメラマンが待機。
 張り詰めた空気。東の空がほんのり光を帯びてくる。
 丘の中腹の小学校も民家も白い霧に覆われる。
 その霧の中から太陽が昇ってきた。
 シャッター音のみ響く。
 「勇気を出して、チャレンジしてごらん」父の声が聞えたような気がした。
 
 子ども達と、アスレチックで遊び、
 秋の深まる中、農道を尾根づたいに、夕焼けを背に帰路についた。


          
              冬薔薇開きて夫の誕生日

 息子が生まれたのを記念して、夫は薔薇を買って来た。
 薄い黄色の花びらは、先が薄いピンク。
 ある年の真冬の12月、蕾をつけた薔薇は
 夫の誕生日に合わせたように花を咲かせた。
 
        
               ごまめの香母をとりまく三兄弟

 お正月が近づくと、わくわくする。
 夫の実家でのお餅つきも楽しい行事のひとつ。
 おせち料理を作るのも楽しいひととき。
 「何作ってるの?」と台所にかわるがわるのぞきにくる息子だち。 
 「ごまめ」「わぁ・・いい匂いがする。食べていい??」「いいよ」
 「おいしいね」よかったぁ。。。
 おせち料理を喜んでくれると、つくりがいがあるね。。。

        
               巣箱より雛が顔出す今朝の春

「今度の誕生日は鳥かごが欲しい」とタク。
 さっそく夫と一緒にペットショップにでかけ、
 インコを二羽買ってきた。
 薄い黄緑と黄色の羽がとてもきれい。
「一羽だけだと、淋しいんだって」
「世話できるの?」「うん。大丈夫だよ」
 毎日、水を替え、餌をやり、葉っぱをやり、鳥かごを掃除する。
 大丈夫と言ったタクは、あっという間に飽きて、世話は、マコトか夫に。
 仲の良いインコ二羽はやがて、結婚し、メスは巣箱に入ったままだ。
 たまごを温めているらしい。
 時々でてきて、お父さんインコに餌をもらって、すぐまた巣箱に戻る。
「大丈夫かな?おなかすかないのかな?」「生きてるのかな?」
「のぞいちゃだめだよ!」「静かにね!」
 ある日、ちいさな声がする。
「もしかして、赤ちゃん??」「4羽いるようだよ」
「見ちゃだめよ」「お母さんインコは、神経質なんだから・・」
 正月を迎え、餌をねだる雛たちの声がだんだん大きくなったある日、
 一羽の雛が巣箱から、顔を出した。

        
            花束をバレンタインの誕生日

買物をすませ、スーパーから出てきたら、あれ?
向こうから自転車に乗って、やってくるのはタクだ。
知らん顔して通り過ぎたよ。どこに行くのかな?
スーパーの中に入っていったよ。
家庭科の材料を買いにきたのかな??
待っても待っても、出てこない。
?????
中に入ってみたら、どこにもいない。。。
あれれ?花屋さんの前にいるのは、タクだ。
あ!!今日は、私の誕生日。私に花束のプレゼントなのだわ。
こっそり帰ったのに、途中で追いつかれてしまったよ。
「あれ?お母さんとっくに帰ったと思ったのに。はい。」
と薔薇の花束。ハッピーバレンタインデー。

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