自叙伝05-03
【基礎講座と『スマイル』受講】
91年6月15,16日&29日、30日の4日間は、アドラーギルド(大阪)で「アドラー心理学基礎講座」を受講しました。講師は、前半が東京の伊東 毅さんで、後半が鎌田 穣さんです。この講座はワークが中心です。ワークはカウンセリングアカデミーの講座で十分体験していたので、すぐに融け込むことができました。この講座では、具体的な場面に即してのアドラー心理学的行動を選択できるように訓練されました。それ以後はだんだん教育センターへ行くのが楽しくなってきました。相談予約がない日は、図書室でもっぱら読書です。機関誌『アドレリアン』を何冊も持参して、しっかり読み込みました。
夏休みの7月23日、30日、8月6日、20日の4回にわたって、岡山で、「SMILE(愛と勇気づけによる親子関係セミナー)」(現在の「PASSAGE」の前身)を受講しました。リーダーは神戸の古田富子先生でした。この方は高橋さと子さんにスマイルを教え、アドラーギルドでは“野田先生のお母さん”と呼ばれていました。アドラーギルドを出られて、大阪の江坂に「サロン・ド・スマイル」という会社を作って、各地でアドラー心理学の講座の出前をなさっていました。自助グループリーダー・Hさんのご尽力によって、当時の「岡山エンカレッジの会」は、全国的にも最も活発な地域グループの1つでした。
SMILEでは課題が出ます。専用シートをいただいて、次の会までの日常生活での出来事を記録します。私は、バツイチでしたので、相手役を母親にしました。おかげで、強烈なマザコンだった私が、母親と権力闘争をするようになったことに気づかされて、大変驚きました。古田先生やHさんから、「これからが大森さんのほんとの親離れ・自立です」と、勇気づけられました。
今から思うと、親にはもっと穏やかに親離れすればよかったです。老いていく時期になって今さら葛藤することはなかったと反省します。(えっ?こういうところがマザコンだって?いいの!)
その点、野田先生の親孝行ぶりは徹底していますね。実家へ帰られるたびに、母上は高校時代の食欲に合わせて料理を作られるそうで、先生はそれを残さず全部食べるために、朝から食事を控え目にされたそうです。私は、「こんなにたくさん食べられん。高校生じゃあるまいし」と不平を言っていました。野田先生と大違いです。
母は、私たちから見ると認知症ではないようでしたが、物忘れはどんどん激しくなりました。今だったらその状況がよく理解できるのですが、何しろ若かったのです。と、言い訳。
それでも親孝行もいっぱいしました。亡くなる直前まで、毎年のように一緒に有馬温泉へ行ったこと。まだ元気で歩き回れることは、飛騨高山から上高地、東京から日光、京都南座の顔見世、だ三代目・市川猿之助の追っかけを大阪~京都~名古屋~東京としたし。有馬温泉から案内パンフレットが来ると、他のことはかなりぼんやりしていても、はっきりと「有馬から案内が来てるよ」と言って嬉しそうに渡してくれました。
学校での生徒や同僚たちとのやりとりでも、とかく権力闘争パターンになりがちだったことが、SMILEのおかげでよく納得できました。
少し長くなりますが、SMILEについて整理しておきます。
東京のヒューマンギルド社では今もやっているかもしれませんが、野田先生の影響の及ぶ所では、先生が改定されたPASSAGEが浸透しました。今さら比較する必要もないのですが、目次を一覧することで、アドラー心理学の総復習ができそうです。
Seminar of Mother(Father)-child Interaction with Love and Encouragementの頭をつないで、SMILEです。
第1章 子どもの行動を理解しよう
1,新しい子育て法
2,適切な行動のための2つの条件(目標と方法)
3,正の注目・負の注目
4,子どもが不適切な行動をする4つの場合
不適切と知らない/適切な行動を知らない/
適切な行動で望む結果を得られない/不適切な行動から望む結果を得ている
5,子どもが不適切な行動を繰り返す場合
チェックポイント
子どもは不適切と知っているか/適切な行動を知っているか/
適切な行動を無視していないか/不適切な行動に正の注目を与えていないか
6,子どもの不適切な行動を正すための4つの原理
冷静に子どもを観察する/適切な行動を一緒に考える/
不適切な行動に注目しない/適切な行動に正の注目を与える
第2章 聴き上手になろう
1,子どもが負の注目を得ようとする2つの場合
適切な行動に正の注目を与えていない/与えた課題が難しすぎる
2,批判は子どもの勇気をくじく
3,罰の望ましくない5つの効果
罰する人がいないと不適切な行動をする/負の注目になり不適切な行動が続く/
適切な行動を学習できない/消極的・依存的になる/親子関係が悪くなる
4,罰する代わりにできること
不適切な行動に注目しない/(同時に)適切な行動を見つけて認める/
他の適切な行動をしている子どもに関心を向ける
5,聴き上手の初歩
6,聴き上手上級編
第3章 子どもを勇気づけよう
1,褒美の4つの望ましくない効果
2,褒美と勇気づけ
3,勇気づけとは喜びをともにすること
4,なぜ勇気づけが必要か
5,勇気づけの一般原理
6,子どもが失敗した場合にも勇気づけよう
第4章 誰の課題でしょう
1,親の課題と子どもの課題
2,子どもの課題に口を出す4つの弊害
3,どんな場合に共同の課題になるか
4,共同の課題にするにはどうすればいいか
5,親の課題と共同の課題に対してどうすればいいか
6,「支配する親」から「援助する親」へ
第5章 子どもを傷つけないで意見を伝えよう
1,頼み方の4つのパターン
2,命令口調とお願い口調
3,意見言葉と事実言葉
4,子どもが要求を聞き入れなかったとき
5,人間は感情の奴隷ではない
6,感情に振り回されない3つのコツ
第6章 体験を通じて学ぶ機会を与える
1,どんな場合も、人間は良い意図にもとづいて行動する
2,欠点は長所として往かせる
3,断り方の4つのパターン
4,意見言葉を使って断ろう
5,子どもは失敗することにより成長する
6,結末の体験と結末について話し合おう
7,話し合いを通じての結末を上手に使う
第7章 新しい家族のあり方
1,ルールが守られるための3つの原則
2,不合理なルールも守られなければならないか
3,縦の関係・横の関係
4,平等と無差別
5,相互尊敬と相互信頼
6,幸福の3つの条件
第8章 社会性のある子どもに育てよう
1,望ましい親子関係のあり方
2,代表的な家族の雰囲気
3,社会性・自立性を育てるコツ13か条
このSMILEは、作者は野田先生ですが、東京のヒューマンギルド社に完全に売り渡していましたので、運用の権利はヒューマンギルド社にありました。開催するリーダーはヒューマンギルド社からテキストを購入して実施します。その後、関東と関西のアドラー心理学理解の食い違いから野田先生は、ヒューマンギルド社での活動をすべて取りやめられました。そしてあらたに「PASSAGE」という新しいプログラムを開発されました。野田先生のご死去により、先生の会社「アドラーギルド社」がなくなり、替わって「野田俊作顕彰財団 AIJ」ができました。学会との調整によって、PASSAGEはAIJの商品となり、学会とは縁が切れました。学会はあらたに「EOLECT」というプログラムを作りました。私は体験していません。これからもおそらく、野田先生の残された路線を固持していくでしょう。