Q 権利と責任
先生の講演で、「ついつい子どもに差別的になっていないか、支配的になっていないか、チェックすること」というお話が心に残りました。
何度注意しても、教室の中でボール投げをしてしまう男の子のボールを取り上げてしまっていましたが、明日、対等に話をしてボールは返そうと思います。
A
話次第では、ボールを返さなくてもいいかもしれないですね。子どもは、「ボールを持っている権利」とか「ボールを使う権利」を持っています。その権利は、「ボールを使うことに伴う責任を取ったとき」にあるんです。責任を取らなかったら、その権利はなくなるんです。権利には、その権利に伴う責任があります。だから、ボールを使う場合には、人に怪我をさせないとか、あまり人のたくさんいるところでは使わないとか、あるいは、決められた場所で使うといった責任を取ってほしいわけです。
教室の中でもしもボールを投げている子がいたら、「ボールを使うのはいいけど、それに伴う責任を取らなくてはいけないと思うんだけど、どんな責任があると思う?」と聞いてみます。例えば、「教室の中でボールを使うと、責任を取れますか?外で使うと、責任を取れますか?もしも、責任が取れないんだったら、権利がなくなります。ボールを使う権利がなくなるから、ボールをお預かりするかもしれませんけど、どうでしょうか?」と一度予告をします。先に一度予告する。そうして結末を体験してもらいます。予告しないで結末を体験してもらわない。そういう手続きを踏んだ上で、もう一度ボールを使ったら、「じゃあお預かりしますね」と預かるんです。それで、一定期間預かって、子どもが「責任を取ります」と言ったら返します。
子どもにぜひ、「権利と責任」を教えたい。極端に言えば、例えば、人を殺す権利も自殺する権利も、権利としては一応あるんですけど、ただ、これの責任が取れないんですよ。「人を殺しました」「それなら、責任を取ってください」。「私死刑になります」と言って死刑になったとしても、責任は取れてないと思います。だって相手は死んでしまっていて、生き返らないから。「私自殺します」と死んだら、責任が取れない。だって、責任を取る本人がいないんだもの。そんなふうに責任が取れないので、一応最初に権利はあったけど、使えないのでなくなったんです。
まあ、人を殺す権利や自殺する権利はともかくとして、生きる権利とか、ものを食べる権利とか、映画を見る権利とか、自動車に乗る権利とかがありますが、全部責任を伴っています。自動車に乗るなら、自動車に乗る責任を取らないといけない。それは、スピード違反したり、駐車違反したり、人を轢いたりしてはいけないということだし、ご飯食べるのはいいけれども、そのあたりにポコッとカスを捨ててはいけないし、たくさん責任を取って暮らすということを子どもたちに教えたい。
そういう文脈の中で、もう1回、子どもさんと話し合ってみてください。(回答・野田俊作先生)