Q 高1女子、休学中、夜遊び
子どもは高校1年の女の子です。ただいま休学中ですが、夜遊び外泊を繰り返します。
A
ホホーっ立派ですね。そりゃそうですよ、この子には生活力がある。あと尊敬と責任と社会性があれば完璧です。高1で外泊できるというのは、生活力があるということなんですよ。男でも見つけていれば、一生暮らしていけますよ、生活力という点では。だから悪いことではないです。まず、基本的に悪いことだと思わないでください。学校の先生たちがこういうことを悪いことだと思い込んでいるから、親たちも一緒に悪いことだと思い込んでいますが、全然男にモテない女の子より、高1で男にモテる女の子のほうが末頼もしいと思いませんか?
このことは、「発達」と「セックス」に関する僕たちの誤った思い込みと大いに関係があるんです。僕たちは間違った育児を受けてきました。最も間違った育児を受けている部分がこのセックスに関する部分です。完全に根底から間違っています。
だから、僕たちはセックスに関してひどく病的なこだわりを持っています。「それはいけない」という形の。残念ながら、そこから僕たちは一生脱却できないかもしれない。あまりにも強力に間違ったことを教えられたから。その話を僕がすると、多くの人が不快になるんです。でも聞いてほしいんです。子どもたちに、この変な遺伝を伝えたくないから。
まず、セックスはいいことです。人間というのは、まぁ、セックスするために生まれてきたようなものです。というのは、子孫を残すことが最も大事なことだから。生物学者たちに言わせると、「人間」というのは存在しないんだそうです。人間というのは要するに「精子と卵子を運ぶ道具」にすぎなくて、遺伝子を運ぶ容れ物なんです。ほんとに生きているのは「遺伝子」だけであって、われわれは自分が持っている遺伝子を次の世代に伝えたらそれで仕事は終わる。これが生物学的な見方です。確かにそうだと思う。だから、容れ物ばかり大事にしてはいけないんです。遺伝子のほうがずっと大事です。ですから、セックスするというのはものすごく大事なんです。ひょっとしたら、この世で一番大事なことかもしれません。われわれが仕事をしたり家事をしたりして家庭を営むのも、ある意味で子どもを育てるためでしょう。子どもを育てるためにはセックスをしなければ子どもができないですから。
良い性生活というのは、良い夫婦生活にとってとても重要なことですね。良い性生活が持てていれば必ず良い夫婦生活が持てるものではありませんが、良い性生活が持ていなければ、良い夫婦生活は持てないです。良い性生活を持てるためには正しい性の知識と経験がなければいけない。知識はつけられるんですが、僕たちはもはや、この年になってからでは良い性の経験をつけるために、「これから武者修業に出ましょう」なんて言えないですね。やはり若いころに武者修業をしておいてほしい。他流試合をたくさんして、それから結婚したほうがいいと思う。絶対にそうです。
処女性を尊重するのは、封建時代の名残りです。女性が商品であった時代の考え方です。家康さんの時代に、お侍の階級とか、商人階級の人たちにとっては、自分の娘は商品だったんです。そのころの武士社会というのは、サラリーマンとしてはとても具合が悪いことに、出世ができない仕組みになっていた。今で言う課長さんはずっと課長さん、部長はずっと部長、ヒラ社員はずっとヒラ社員。よほど何かがないと出世はない。例えば旗本の中にも階級があって、部長とか課長とかのようなものがあるわけです。ヒラの家に生まれたら絶対に課長になれない。子々孫々ずっとヒラ。しかし、そのヒラ社員が課長になる方法が1つだけあった。娘を売る(=嫁がせる)ことです。自分の娘を課長さんの家の息子と結婚させると、親の地位が上がる。だから、娘はすごく大事でした。ほとんど唯一の出世の武器です。ですから、娘を囲っておいて、少しでも高く売りつけようとしたんです。処女性の尊重というのは、そういう意味です。あの娘は処女だから値段が高いとかね。特に女性が処女性を尊重するなんて自己矛盾だと思う。「私たちは人間ではありません。品物と一緒です」と言っているのと同じだから。男の人が、「相手が処女じゃなかったらイヤだ」と言うのは、相手を「人間ではありません。品物です」と言っているのと同じで、すごい女性差別だと思う。だから、処女であることなどあまり気にしないほうがいいです。
「発達」から考えますと、人間は普通何歳くらいからセックスをするものか。今は学校と警察と親とが必死になって、セックスをいけないものとして止めていますから遅くなっていますが、そんなことをしないで、放ったらかしておいたら自然の状態の人間は、何歳くらいからセックスをするようになるか。たぶん、14歳くらいじゃないかな。
それは民族学の学者が未開民族(発展途上民族)の調査をした結果や昔の歴史の研究なんかでわかります。マーガレット・ミードの『サモアの思春期』という本が出ていまして、サモア島というところの、思春期を迎えた男女の成長の記録が出ています。これを読むと、すごくよくわかります。男の子がだいたい14,5歳くらいになると、男の子だけが集まる“若者宿(若衆宿)”に行くようになります。女の子も、13,4歳くらいで女の子だけの集まりを持つようになります。そして、男女がその間を絶えず行き来して、ちょっと乱交的にセックスをするようになります。
で、日本の昔だと、男の子が17,8歳くらい、女の子だったら14,5歳になると結婚ですね。鎌倉時代や室町時代というのはそんなものです。江戸時代になって、ちょっと遅くなりましたが。それくらいが人間がセックスをする時期で、昔だったら結婚適齢期です。しかも自然の状態だったら、結婚の前にセックスに乱交的な時期があるんです。僕(野田)のおじいさんは、三重県の山奥の出身です。先祖代々、熊野の山奥で暮らしていたそうです。で、おじいさんの時代には、もうなかったそうですが、ひいおじいさんは「よく夜這いに行ったもんだ」と言っていたと、おじいさんが言っていました。夜這いというのもなかなか難しいんだそうです。おじいさんから聞いた又聞きなんですが、最初は近所の先輩に連れられて、隣村の後家さんの家に行くんだそうです。そこで、いろいろと教えてもらう。そこで十分トレーニングを積んだら、これとおぼしき女の子の家に1人で行く。女の子の両親もだいたい気づいていて、誰が来ているか陰から見てるんです。見てて、この男は婿にしてやろうと思うと、出て行って現場を捕まえるんですって。「こりゃ!お前は何をしているんだ」と捕まえて、「責任を取れ」と迫るんです。こいつは婿にはしたくないと思うと知らんぷりして寝てるんですって。そんなふうに何人かガールフレンドを作って、見つかって逃げたりしながら、そのうちに、「ああ、この人がいい」と思うと結婚していくんです。そういうふうにして結婚すると、どういういいことがあるかというと、まずお互いに体験がたくさんあるということです。結婚してもいろいろなことに驚かないですみます。それから、やはり性的な面まで適合性を見て結婚しているので、結婚してからもめることが少ない。特に昔の村ですから、同世代の女の子の何パーセントか何十パーセントかとはセックスしたことがあるわけで、そんなに浮気をする気にならない。だから結婚生活がすごく安定しているといういいことがあります。これは多くの民族学の調査が立証しています。
「文明が進歩した」とよく言いますが、生物としての人間はこの10万年以来何も進歩していないんです。ですから、今の中学生の後半から高校生の前半くらいにかけて、いろんな男の子といろんな女の子がお互いにいろいろと性的な体験を持っていく時期というのがあるわけです。僕が中学生、高校生だった時期には、大人に騙されて、「セックスなんていけない」と言われて、「そうかな」と思っておとなしくしていた。でも幸いに今の子どもは僕らより賢いから騙せない。ちゃんと自分の生物学的な声を聞くことができる。だから外泊なんかして、男の子たちと過ごすわけです。これは医学的に見て健康なことです。医学的に心理学的にはすごく健全な発達をしているんです。われわれの社会通念的にはどうかというのとは別問題です。社会通念のほうが間違っていると思う。だからこのこと自体はいいことです。
アメリカでは、若い男女が夜の街にブラブラと出かけて行って、その場でバタッと知り合うとセックスをして、お互い名前も家も知らないままでサヨナラして、次の日もまた別のところに行って……という現象が出てきました。それで親も教師もびっくりしました。アメリカという国は、日本以上に性的な道徳の堅い国です。如何せんキリスト教国ですから。日本人は、わりと大らかなところが結構あるんです。江戸時代の川柳だの小咄だのを見ていると、すごく大らかです。明治時代以降です、変わってきたのは。アメリカは建国以来、大らかだったことは1回もないんです。すっと清く正しく生きてきた。だから、そういうことが起こったときに、パニックに陥ってしまった。それでいろんなことをやったんです。学校ではしっかりキャンペーンをやりましたし、政府もいろいろとやった。でも全然駄目で、どんどんエスカレートしていって、結局みんな諦めてしまった。「こりゃ、しょうがないや」と。で、見ていると、それで人間がメチャクチャになるかというと、ならないことがはっきりした。1年か2年かそういう時期があって、すごく乱交的に過ごして、その後その子たちは普通に結婚していく。それがわかったので、みんなあまり言わなくなっていった。だから、今では風俗化したというか、当たり前のことになってしまいました。
僕のアメリカ留学時代の同級生に、高校の英語の先生がいました。彼女が言うには、自分のクラスの8割くらいの子が乱交します。だから、避妊教育と性病予防教育というのが必須科目だと言うんです。アメリカの高校では託児所があるのが普通です。先生のためではなくて、生徒のための。中学校でもこのごろは託児所ができたと聞きました。アメリカ人は現実的ですから、子どもができるとなると、そのための対策を作ります。子どもができたからってもちろん退学になったりはしない。日本でも最近そうなりつつあります。みなさんがあまりご存じないだけです。
だから、セックスはいけないものではない。いけないというわれわれの社会通念のほうが間違っているだけです。
それから、誰と誰とがくっつくか、誰と誰とが離れるかということはその人たち当事者の問題であって、われわれの問題ではないです。民事不介入と言って、警察でも「どこの夫婦がくっついて、どこの夫婦が別れるか」なんてことに関心を持ってないです。僕たちも、子どもがどんな男とくっつくかなんてことに関心を持たないほうが健康のためにいいです。それは彼らの責任において解決すべき課題ですから。
ただ、僕たちに迷惑がかかったりすることがあります。1つは妊娠です。別に迷惑でないと思えばかまわないのですがね。早く孫の顔を見たいと思えば、妊娠してもらえばいい。私生児というのも悪くはないです。私の友だちに私生児の母がいます。彼女はボーイフレンドと一緒に住んで同居までしているのに、籍を入れない。“私生児の母”をやってみたいんだって。「どれだけ社会的に差別されるか自分で確かめてみたい」と言うんです。私生児というのは籍が入っていないだけで、他の子どもと何も変わらないけれど、きっといっぱい差別されるだろう、それを楽しみにしばらくやってみようと思ったと言う。ところが、昔と違って今はあまり差別されないんです。戸籍でも嫡子と庶子の区別をしなくなり、ただ「子」と書く。「同棲」と「内縁」の法的な違いを知っていますか?“内縁の妻”とかよく言うでしょう。あれは籍は入っていないけども、お互い同士がこれは結婚だと思い、友だちとか親たちとかも、あれは夫婦だと認めているような関係を言うんです。同棲というのは、友だちなんかも夫婦だと思っていないし、本人たちもこれは婚姻関係ではなくて、たまたま一緒に暮らしてだけだと思っているような場合を言うんです。法律的に内縁と同棲は全然違う。内縁関係だと、例えば相続だとか、あるいは健康保険の扶養家族とかが認められるんです。税金の控除もあり、ほとんど普通の夫婦関係と同じです。ところが、そこに子どもができたらやっぱり私生児です。でも普通の夫婦関係や親子関係と同じように扱えますから、法的な差別は、もはや今はないんです。社会的な偏見があるだけです。そういうことも、だんだんなくしていかなければいけないと思います。恥ずかしいことですからね、そういうことで社会的な偏見があるということは。私生児の母親であることに、母も子も何も罪はないのだし。籍に入っているからって、そう偉いわけでもない。それだけのことです。
ということで、「子どもを産んでもかまわない」と言えばかまわないと思うけど、「それは困る」と言えば、子どもと相談してみることです。
「今度、素敵なボーイフレンドができたみたいね」
「うん」
「どうするの、子ども産むの?」
「子どもはイヤ」
と言えば、子どもを産まない方法を知っているかどうか聞いてみる。だいたい、あまり知識がないです。男の子の親の場合は簡単です。私(野田)の息子にも、生意気なことにガールフレンドがいるんです。よくデートしているんですが、「ちゃんとスキン持ちましたか?」と聞くと、「お父さんは、いったいいつになったらその発想から離れられるんですか」と怒る。僕は「いったいいつになったら、その発想を持ってくれるんですか」と返すんです。男の子の場合は、スキン1つ知っていればそれですむけれど、女の子の母親の場合はそれだけでは不十分です。スキンというのは、男の子が付けてくれなかったらどうしようもない。女の子が自分で避妊する手段を知っていますか?ピルは駄目ですよ。あれは、実際にはかなり副作用があるんです。僕だったら、自分の娘に飲ませたくないです。それから、まさかリングを入れさせるわけにもいかないし、できることといえば「マイルーラ」しかないです。マイルーラというのは、ビニールみたいな透明なフィルムです。それを膣に入れて子宮腔にくっつけると溶けて、それが精子を殺すんです。ものは中性洗剤みたいなものです。中性洗剤みたいなものだから決していいものとは言えなくて、少し副作用もあります。だから、あまりそればかり使っていると良くないかもしれない。けれども、緊急の場合に使うにはとても便利です。男の子とセックスすることになって、男の子が避妊をイヤがったら、女の子のほうでそれを使えば、かなり高い確率で避妊ができます。これは娘さんに教えておいたほうがいいです。
第2番目は、性病(STD)の問題です。性病についても子どもたちはあまり正しい知識を持っていないです。学校の性教育は良くないですね。学校の性教育は、昔ながらの“純潔教育”で、結局本音は「セックスさせないでおこう」という教育です。息子が学校の性教育の教材プリントを持って帰ったので、それを見たら笑っちゃいました。「お父さんこれ見て。チンケだから」と言うので見たら、ほんとにチンケなんです。「愛のないセックスはいけません」なんて書いてある。こんなこと教えてどうするの。もっと具体的にセックスの仕方を教えたらいいのに。梅毒とか淋病とかは、今ものすごくたくさんあります。特に今、梅毒はものすごい確率であります。高校生に梅毒チェックを絶対にしたほうがいいと思う。早目に適切に治療しないと恐いですからね。売春防止法という法律ができてから、梅毒がとても多くなりました。というのは、変な話ですが、売春防止法ができる前には、その道の商売の女性方は検査をきちんと受ける義務があったので、大学病院の皮膚科と精神科の医者が出張して梅毒チェックをしていた。ところが売春が禁止になったら、建前上そんなことはできない。だからもう国は知らん顔です。知らん顔をしているから、いくらでもはびこる。昔は見つかりしだい、すぐに商売を休んでいただいて、入院して治療していただいたんですがね。そういうわけで大変増えました。それからベトナム戦争のときに、ベトナム製の強力なヤツを持ち込んでくれた。ベト菌と称するヤツですが、これはペニシリンが効かないんです。そんなのがありますし、ひょっとしたらエイズも大々的に流行するかもしれません。だから、親もそのことをちゃんと話しておいて、「まぁ、そんなことはないだろうけど、検査だけでも受けておいてください」と頼んだほうがいい。もしも家族の中に梅毒の人がいたらイヤでしょう。同じ食器でご飯を食べて、同じお風呂に入るわけでしょう。あいつにスピロヘータがいると思うとイヤだから、この点はぜひお願いする。
第3番目に迷惑をかけることは、警察と学校です。日本の警察と教師は女の子にモテないですね。だから、高校生や中学生がイチャイチャしていたら、ヤキモチを焼くんです。それで邪魔しよる。彼らに見つかるといろいろうるさい。だから、お巡りさんと学校の先生に見つからないようにお願いしておくほうがいい。「お巡りさんと先生に見つからないようにつきあってくださいね」と。見つからないようにするためにはどうすればいいか。家に来てセックスをしていただくのが一番いいです。「ぜひ、わが家でやってください」とお願いする。鏡台の引き出しにそっとスキンを入れておいて、娘がそれとなく引っ張り出せるようにしておいてやればいい。そういうふうにしておけば、どこかへ外泊することはないわけで、外泊するということは、この家じゃ男の子と一緒に泊まれないからでしょう。この家で男の子と一緒に泊まれるなら、外泊しないで男のほうが外泊に来ます。どっかへいるわけですから、向こうの家も泊まるのに都合が悪い家だったら、そのどっちでもない家に外泊する。だったら、このお母さんの家にこの2人がいるのがいいか、相手の男の子の家に2人がいるのがいいか、そのどっちでもないところへ2人がいるのがいいか、この3つの中から1つ選べる。2人が別々にいるというのは選べないんです。そんな生木を裂くような野暮な考えを持ってはいけません。というわけで、私は自分の家にいるというのが一番好きですから、子どもたちがもしも「家に来る」と言ったら来てもらう。そして、「お邪魔かしら?」と聞いて、「邪魔だ」と言われたら、私のほうがどこかホテルに泊まりに行く。「どうぞごゆっくり」と言って。このほうが安全なんです。そうやっておくと、どんなことが起こるかというと、多くはたぶん別れるでしょう。冷たい言い方ですけど。
高校1年生くらいの男女が、結婚まで行くというのは珍しいです。いろんな点で、発達心理学的にも生物学的にも珍しいんです。もちろん、結婚までいくこともあります。でも、たぶん別れるでしょう。そしてまた別の男の子とつきあいます。そうやって経験を積んでいって、やがて本当のセックスパートナーとしての相手を見つけ、それが本当の生活パートナーになっていくでしょう。それがとても望ましいコースです。別れるにしても、親がうるさく言っていないほうが別れやすいんです。親が、「別れなさい、別れなさい、そんな不潔なことはやめなさい」と言っていると、どんなことが起きるかというと、別れると子どもの負けで、別れないでいると親の負けでしょう。そしたら、子どもは負けないために、相手が嫌いになっても無気になって別れないでいますよ。それはあまりいい状態ではない。だからあまりかまわないほうがいい。
要するに、何が迷惑なのか、そのことで親にどんな迷惑がかかっているのかをはっきりと考えてみてほしい。外泊とか門限破りとかという問題に関しても、何が迷惑なのか考えるとわかります。わが家のお坊ちゃまも、一度門限破りみたいなことをやりました。「まぁ帰りが何時になってもかまわないですが、あんまり遅くなったら電話をください」と言っていたのに、10時なっても帰ってこない。パチンコ屋ではないですね。パチンコ屋は10時に閉まりますから。12時になっても帰ってこない。これは警察でもないと思いました。警察は12時を超えて人を置いておくと、家庭裁判所に連絡しなくてはならないので、手続きが面倒臭い。だから補導しても、12時には家に帰したがる。だからきっと違うだろうと思った。病院でもない。病院だったら電話がかかってくるはず。ということは、友だちの家です。それならかまわないです、どこにいてもらおうとも。無事でさえいてくれたら。で、機嫌良く寝ました。そしたら午前5時ごろに帰ってきました。狭い家ですから、音で目が覚めました。起きて覗いたら、ゴソゴソきまり悪そうな顔をしている。はい、ここで一言。親というものはこういうときに何を言えばいいか?私は二言(ふたこと)だけ言いました。せっかく帰ってきたんだから、「お帰り」と言い、まだ眠かったから、「お休み」と言った。それでそのときは終わりです。2,3日してから、機嫌のいいときに、ちょっと話をしました。「この間は遅かったというか早かったというか、あれはちょっと困ります」。何が困ったか。実は自分でもよくわからなくて考えてみました。わかったのは、玄関の鎖錠をかけていいのかいけないのかわからなかったこと。私が寝る11時くらいまでに帰ってくるんだったらいいけど、それ以後になるなら錠をかけたい。鎖をかけていると彼が入れなくなる。だから、「鎖錠をかける都合があるので、11時以後に帰ってくるときは電話がほしい」と言いました。彼はわかってくれたんでしょう。それ以後こういうことはありませんでした。
基本的には、彼が何時に帰ってこようが僕はかまわないんです。彼がどこで泊まろうが、何時に帰ってこようが、それくらいは僕でも息子を信頼していますから。彼はバクチ打ちでね、マージャンをやっていたんです。よく何人か集まって、友だちの家でやっていたんです。向こうの家に迷惑かけて悪いかなとも思ったんですが、何も言ってこないから別にいいんじゃないか。向こうの親から何か言ってきたら、彼に話をして共同の課題にすればいい。僕は、「じゃあ、ときどきはうちでやってもらいましょう」と言おうと思っています。一方的に向こうの家ばかりに迷惑をかけるのはイヤでないこともないですが、こちらから向こうの親には言わない。息子がイヤがりますから。こっちから向こうの親に言うと、子どもの顔がつぶれますから。
話を戻して、いったい外泊で何が困るのか、一度よく考えてください。娘さんが男の子とつきあうことで何が迷惑なのか。どうすれば外泊というのをそのまま置いておいてでも、迷惑をなくすことができるのかを、ね。(回答・野田俊作先生)