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    「糖尿病療養の再検討」


    本稿の要旨は
    2006年6月1日 岡山県糖尿病協会総会で講演しました。

    なお、無断複製、転載、転用はお断りいたします。
      A糖尿病とは
    1.血糖及びそれに伴う代謝障害
    . 動脈硬化による慢性合併症

     糖尿病の診断基準
    1. 空腹時血糖≧126mg/dl
    2. 随時血糖≧200mg/dl
    3. 糖尿病に特異的な症状がある。(口渇、多尿、多飲)
    4. 糖尿病に典型的な網膜症がある。
    5. HbA1c6.%(JDS6.1%以上)

      しかしながら、この基準は医学的な統計をとるという意味もあり、糖尿病に絶対間違いないというレベルの数値なので、自分の検査値がこれに当てはまらないからと言って、糖尿病ではないと判断するのは誤りです。

    なぜかというと、境界型の糖尿病でも, 5年間追跡すると10%ぐらい網膜症が発症すると言われています。

     境界型糖尿病は初期の糖尿病である。

     75G OGTT(絶食で75g、ブドウ糖を飲んで空腹時と2時間後の血糖を測定する検査)で糖尿病の診断をつけます。

     学会の基準を下の表に示しています。

     75Gブドウ糖負荷試験

      空腹時

     

      負荷後2時間値

     空腹時

     食後2時間値

     

    糖尿病型

     126mg/dL

    および、または  

      ≧200mg/dL

     

      糖尿病型にも正常型にも属さないもの

     

    110mg/dl

    および

      <140mg/dL

      

     

     

     

     

     

     

     

     

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    しかし、上の図の様に空腹時血糖、2時間血糖は低いにもかかわらず1時間血糖だけ高いものははどうなるのでしょうか?

    空腹時血糖と2時間血糖だけを機械的に当てはめると、異常なしと判断されますが、実は正常ではないのです。1時間血糖が180mg/dl以上であると顕性糖尿病に移行する頻度が高いと言われています。

     厳密な意味でこれは初期の糖尿病と言えます。

    HA1cが5.55.6%以上ではかなりの方がこのような正常ではない血糖パターンをとると言われています。したがって人間ドックなどではごく初期の糖尿病を見逃しうる可能性があります。

     初期の糖尿病ないしは境界型糖尿病の特徴

    1.    空腹時血糖や食前血糖は低く食後血糖だけが高い。

    2.    したがって、12ヶ月の血糖の平均であるHbA1cは高くはない。

    3.    健診やドッグでは見過ごされる可能性がある。

    初期の糖尿病ないしは境界型糖尿病の治療

    では、こういうものの治療はどうしたらよいのでしょうか?食事と運動療法が基本です。この2つを励行することで顕性糖尿病への移行が半分ぐらいに抑えられます。またこの段階で治療をしっかりすれば血糖曲線のパターンが正常に戻ることもわかっています。すなわち軽い糖尿病は完治する可能性があります。

    B 糖尿病の合併症

     細小血管障害
    1.    網膜症 ・・・ 失明
    2.    腎症 ・・・ 透析
    3.    神経障害(足のしびれ,知覚鈍麻)

     大血管障害

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    C 糖尿病の治療

     食事、運動、薬物療法(経口剤、インスリン)、このうちのどれが欠けても糖尿病の治療はうまくいきません。初期の糖尿病であれば食事、運動療法で治療を開始するのがよいでしょうが、あまり改善傾向が見られない場合は経口剤の併用も検討するのが良いと思われます。

     また、経口剤は中程度までの糖尿病の治療にはよいですが、経口剤で改善しなかったり、発見時重症のものは速やかにインスリンを使うべきです。適切な治療が遅れると合併症がその間に進行します。 インスリン治療を躊躇される方が多いですが、最近は、インスリン注射器も扱いやすく、針先も特殊な加工がしてあって、痛みもほとんどありません。心理的な要因や、仕事場で同僚に知られると困るといった理由が多いようです。

     また、2型糖尿病では、必ずしもインスリンを一生うつ必要はありません。(1型糖尿病は膵臓から全くインスリンが出ないので、残念ながら一生注射する必要があります。) 離脱することも可能です。 外部から注射でインスリンをしっかり補給してやり、くたびれてインスリンが出ていない膵臓をしっかり休ませてやることにより自分の膵臓よりインスリンが再び分泌され、インスリン注射を離脱することも可能です。ただし、この場合、食事、運動療法が厳重にできていることが絶対条件です。

    1. 食事療法
    体重1kgあたりの1日に必要なカロリーは以下の通りです。

    軽労働   2025キロカロリー
    中労働   2530キロカロリー
    重労働   3035キロカロリー

    n肥満者は基準料より少なめに。

    また、糖尿病基礎食(1200kca、蛋白質、糖質、脂肪を下記のような割合でとるのが必要とされています。

    蛋白質   1520%
    糖質     5560%
    脂質     25%以内

     1単位80ksalとして計算し、基本的なことは、日本糖尿病協会の食品交換表を使って理解されるのがよいと思います。また、細かい献立については、最近いろいろな献立集が発売されているのでそれを参考にされると良いと思います。

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    糖尿病食のこつ

    獣肉その脂を摂りすぎない。
    主食は、白米や白パンのみにしない。(麦飯や色のついたパンもとる。)
    緑黄色野菜をしっかりとる。
    食物繊維をしっかりとる。
     計量計を活用する
    台所や食卓に計量計を置く。
    自分流にせず、計量計を使って量を確認する。
    食品交換表を使って、目の前の材料が交換表の第何表の何単位に相当するか確認する。

    食物の質の問題(血糖化指数)

    同じ量の糖質を含む食品でも、食後の血糖上昇率は食品によって違います。食後の血糖上昇が緩やかなら、インスリン分泌が少なくて済む。糖質性食品の摂取に際してはまず食品交換表に習熟して適量の糖質をとる努力が必要ですが、次の段階としては糖質の量だけでなく、その質をも併せて考慮する必要があります。 同じ糖質量のブドウ糖が、食後2時間の間に吸収されて血液中に出てくる血糖量を100とし、それに対して他の食品がどのくらい血糖を上げるかという比率を「血糖化指数」と言います。例えば血糖化指数が50の食品は同じ糖質量のブドウ糖を摂取した時に比べて、食後2時間の血糖が合計で半分しか上がりません。そして残り半分の血糖が、その後も少しずつ腸から吸収されて来るため次の食事までの血糖値を低すぎないように維持する効果もあります。

     従って糖質性食品をとる時は、血糖化指数の低い食品の比率を増やすように心掛ければ食後高血糖の低減高インスリン血症の改善を期待できます


     血糖化指数の一般的傾向(括弧内数値はGIの目安)

     柔らかくて吸収の早い食品は指数が高く、半固形・固形のものは低い。
    マッシュドポテト(90)よりポテトそのもの(70)
    精白パン(95)よりスパゲティー、マカロニーなど(40ー50)精製されたものより精製度の低い食品が低い。
    精白パンより褐色がかったパン(製粉歩留まりの高い粉使用、50ー65)
    精白米(75ー90)より胚芽米(70)、玄米(50ー55)
    豆類(20ー50)、乳製品(30ー39)、植物繊維の多い食品は低い。
    糖質性食品を蛋白質や油脂・多脂性食品と一緒に食べると、指数が低くなる。

    関連文献:林 進ほか:これからの栄養食事指導、
    FROM DM STAFFS、プラクティス Vol.18 No.1 2001.1.2.

    その他 :インターネット・ホームページ、検索キーワード「血糖化指数」または
    glycemic index」で、GIデータが色々と発表されています。

    運動療法

     運動の効用
    1. 血糖を下げる
    2. 内臓脂肪を減らし、インスリンを効きやすくする。
    3. 心肺機能を強くする。
    4. 筋力を強くする。

     運動時の注意点
    1. 心電図等のメディカルチェックをする。
    2. 進行した網膜症では腹圧をかける運動は避ける。
    3. 食後に運動する。
    4. 過度な運動により、低血糖を来たし。その反動で血糖が上昇し、
       血糖が不安定になることがある。

     静的運動、動的運動を組み合わせる

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